🟠第2回：「怒らない子育て」は教育になり得るか？

「怒らない子育て」という言葉には、どこか理想的な響きがあります。感情的にならず、冷静に子供と向き合う姿勢は、確かに目指すべきもののように思えます。しかし、それが“教育”として本当に成立するのかと考えると、少し立ち止まって考えたくなります。

教育とは、子供に何かを伝え、育てていく営みです。そこには当然、価値観の共有や、時には行動の修正も含まれます。子供が他者と関わる中で困らないように、社会のルールや人との距離感を学ばせることも、親の大切な役割です。

その過程で、親が怒りの感情を持つことは、決して不自然なことではありません。むしろ、子供が他者の感情に触れることで、「こうすると相手は嫌な気持ちになるんだ」と気付くきっかけにもなります。怒りを通して伝えられることも、確かにあるのです。

もちろん、怒鳴ったり、感情をぶつけたりすることが良いわけではありません。けれども、怒りを完全に排除しようとするあまり、親が何も言えなくなってしまうと、それは教育の放棄にもつながりかねません。

また、「怒らずに伝える」ことは、実はとても高度なスキルです。教育の専門家であれば可能かもしれませんが、日々の忙しさの中で、常に冷静でいられる親はそう多くありません。だからこそ、怒ってしまう自分を責めるのではなく、「どう伝えるか」を少しずつ工夫していくことが大切なのだと思います。

怒ることも、怒らないことも、どちらか一方が正しいわけではありません。子供に何を伝えたいのか、その目的を見失わないことが、教育としての子育ての軸になるのではないでしょうか。

次回予告

次回は、「怒らない子育て」が時に“諦め”や“距離”を生む可能性について、もう少し深く掘り下げていきます。