11-3 「算数好き」を育てるために必要なこと

ここまで、「結果を楽しむ好き」と「過程を楽しむ好き」の違いについて考えてきました。
では実際に、後者のような「考えることを楽しめる子」を育てるには、何が必要なのでしょうか。

ここでよくある誤解があります。

それは、
「考えることが大事なら、計算はそこまで重視しなくていいのではないか」
という考え方です。

しかし、これは少し違います。

むしろ逆で、
考えることを楽しむためには、基礎的な処理はスムーズである必要があります。

たとえば、第2回で扱ったお菓子作りの話で考えてみましょう。

料理が好きな人は、材料を量ったり、道具を使ったりする基本的な動きに時間を取られすぎることはありません。
レシピを見れば、それが何を意味しているのかすぐに理解でき、手順も頭の中でイメージできます。

だからこそ、「どうしたらもっと美味しくできるか」といった工夫に意識を向けることができます。

もしここがスムーズでなければ、どうなるでしょうか。

分量が分からない
混ぜ方が分からない
手順が分からない

そうした状態では、楽しむどころではなくなってしまいます。

算数も同じです。

計算に時間がかかる
基本的な知識があいまい
問題文の意味を捉えるのに時間がかかる

こうした状態では、思考に集中することが難しくなります。

つまり、計算力や知識は「目的」ではなく、
考えるための「土台」だということです。

もう少し言い換えると、
計算が速いことは、算数ができることのすべてではありませんが、
考える算数を支える重要な準備である、という位置づけになります。

ここがそろっていると、子供は余計なところで止まらずに、

どう考えようか
他に方法はないか
この考え方は使えそうか

といった、本来の楽しさに入りやすくなります。

さらに大事なのは、大人の関わり方です。

時間をかけている姿を見たときに、

「早くやりなさい」ではなく、
「どう考えているの?」と興味を向けること。

うまくいかないときに、

「違うでしょ」ではなく、
「いいところまで来ているね」と途中を認めること。

こうした関わりの積み重ねが、
「考える時間は価値があるものだ」という認識を育てていきます。

算数好きは、単に能力だけで決まるものではありません。

・考えることを認められる環境
・試行錯誤を続けられる安心感
・そしてそれを支える基礎的な力

この三つがそろったときに、
はじめて「算数が好き」が持続的なものになります。

遠回りに見えるかもしれませんが、
この積み重ねこそが、最後に一番伸びる道だと考えています。


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