26-1 なぜ、説明すればできるのに、テストではできないのか。

「家でやり直したらできたんです。」

保護者の方から、よく聞く言葉です。

授業では理解していたように見える。 先生が説明すると「分かった」と答える。 解き直しでは正解できる。

それなのに、テストになると思うように点数が取れない。

こういう場面を見ていると、

「理解力が足りないのかな」

「考える力が弱いのかな」

と思ってしまうことがあります。

しかし、実際にはそうとは限りません。

私は子供たちの様子を見ながら、

「問題が分からない」のではなく、

「問題が読めていない」

ことが原因になっているケースを数多く見てきました。

ただし、ここでいう「読む」とは、文字を声に出して読むことではありません。

テストで求められる読む力には、いくつもの要素があります。

まず、読めない文字があるかもしれません。

漢字が読めなければ、その時点で問題の意味を正しく受け取れません。

次に、言葉の意味を知らない場合があります。

例えば算数でも、「残り」「合わせて」「差」「以上」などの言葉の意味が曖昧だと、何を求めればよいのか分からなくなります。

さらに、文章同士の関係性を理解できていないこともあります。

誰が何をした話なのか。

何と何を比べているのか。

どの情報が条件で、どの情報が答えにつながるのか。

そうした関係を整理しながら読む必要があります。

また、最後まで読み続ける体力が足りない場合もあります。

長い問題文を見るだけで疲れてしまい、大事な部分を読み飛ばしたり、途中で集中が切れてしまったりします。

そして、読むのに時間がかかりすぎるケースもあります。

内容は理解できるのです。

でも、一文一文を読むのに時間を使いすぎてしまい、考えるための時間が残らないのです。

こうして見ると、「読めない」と一言で言っても、その中には様々な原因が含まれていることが分かります。

実際にテスト後の見直しでは、

「この漢字はこう読むんだよ。」

「この言葉はこういう意味だよ。」

「ここは何と何を比べているかな。」

「一文ずつ整理してみようか。」

とサポートしていくと、

「なんだ、そういうことか。」

と自分で答えにたどり着けることが少なくありません。

つまり、その子は何も知らなかったわけではないのです。

持っている知識が不足していたのではなく、

問題文から必要な知識を取り出すところで困っていた。

ということです。

よく算数の文章題について、

「読解力がないからできないんですね。」

と言われることがあります。

もちろん、それは間違いではありません。

ただ、少し解像度が粗い言い方でもあります。

読解力がないのではなく、

漢字が読めないのかもしれない。

言葉の意味が分からないのかもしれない。

関係性を整理できていないのかもしれない。

読む体力が足りないのかもしれない。

読む速度が追いついていないのかもしれない。

原因によって必要な支援はまったく異なります。

だからこそ、「できない」という結果だけを見るのではなく、

どこで止まっているのかを見取ること。

そこに専門家としての仕事があるのだと思います。

次回は、なぜ説明を聞けば理解できるのに、自分で読むと難しく感じるのかについて考えてみます。

実は、「聞くこと」と「読むこと」には、小学生にとって大きな違いがあるのです。


次回予告

「説明を聞けば分かるのに、一人で読むと分からない。」

その背景には、子供の認知発達の特徴があります。生まれたときから続けている「聞く」と、小学校に入ってから本格的に始まる「読む」。その違いを考えていきます。


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