「家でやり直したらできたんです。」
保護者の方から、よく聞く言葉です。
授業では理解していたように見える。 先生が説明すると「分かった」と答える。 解き直しでは正解できる。
それなのに、テストになると思うように点数が取れない。
こういう場面を見ていると、
「理解力が足りないのかな」
「考える力が弱いのかな」
と思ってしまうことがあります。
しかし、実際にはそうとは限りません。
私は子供たちの様子を見ながら、
「問題が分からない」のではなく、
「問題が読めていない」
ことが原因になっているケースを数多く見てきました。
ただし、ここでいう「読む」とは、文字を声に出して読むことではありません。
テストで求められる読む力には、いくつもの要素があります。
まず、読めない文字があるかもしれません。
漢字が読めなければ、その時点で問題の意味を正しく受け取れません。
次に、言葉の意味を知らない場合があります。
例えば算数でも、「残り」「合わせて」「差」「以上」などの言葉の意味が曖昧だと、何を求めればよいのか分からなくなります。
さらに、文章同士の関係性を理解できていないこともあります。
誰が何をした話なのか。
何と何を比べているのか。
どの情報が条件で、どの情報が答えにつながるのか。
そうした関係を整理しながら読む必要があります。
また、最後まで読み続ける体力が足りない場合もあります。
長い問題文を見るだけで疲れてしまい、大事な部分を読み飛ばしたり、途中で集中が切れてしまったりします。
そして、読むのに時間がかかりすぎるケースもあります。
内容は理解できるのです。
でも、一文一文を読むのに時間を使いすぎてしまい、考えるための時間が残らないのです。
こうして見ると、「読めない」と一言で言っても、その中には様々な原因が含まれていることが分かります。
実際にテスト後の見直しでは、
「この漢字はこう読むんだよ。」
「この言葉はこういう意味だよ。」
「ここは何と何を比べているかな。」
「一文ずつ整理してみようか。」
とサポートしていくと、
「なんだ、そういうことか。」
と自分で答えにたどり着けることが少なくありません。
つまり、その子は何も知らなかったわけではないのです。
持っている知識が不足していたのではなく、
問題文から必要な知識を取り出すところで困っていた。
ということです。
よく算数の文章題について、
「読解力がないからできないんですね。」
と言われることがあります。
もちろん、それは間違いではありません。
ただ、少し解像度が粗い言い方でもあります。
読解力がないのではなく、
漢字が読めないのかもしれない。
言葉の意味が分からないのかもしれない。
関係性を整理できていないのかもしれない。
読む体力が足りないのかもしれない。
読む速度が追いついていないのかもしれない。
原因によって必要な支援はまったく異なります。
だからこそ、「できない」という結果だけを見るのではなく、
どこで止まっているのかを見取ること。
そこに専門家としての仕事があるのだと思います。
次回は、なぜ説明を聞けば理解できるのに、自分で読むと難しく感じるのかについて考えてみます。
実は、「聞くこと」と「読むこと」には、小学生にとって大きな違いがあるのです。
次回予告
「説明を聞けば分かるのに、一人で読むと分からない。」
その背景には、子供の認知発達の特徴があります。生まれたときから続けている「聞く」と、小学校に入ってから本格的に始まる「読む」。その違いを考えていきます。

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