🧭第1回　「○○ずつ」と「単位量あたりの大きさ」は同じ？

「単位量あたりの大きさ」という言葉は、５年生の算数で初めて登場します。たとえば「1平方メートルあたり2.2人」や「1人あたり3.2平方メートル」といった表現です。これは、ある量を別の量で割って、１あたりの大きさを求める考え方です。

しかし、この考え方は、実はもっと前の学年で出てきています。２年生のかけ算の学習では、「○○ずつ」という言葉を使って、「１あたり量 × いくつ分」という構造を学びます。たとえば「3個ずつ入った箱が5つあるとき、全部で何個？」という問題です。

この「○○ずつ」は、まさに「１あたり量」のこと。つまり、「単位量あたりの大きさ」と「○○ずつ」は、本質的には同じ概念なのです。

ところが、学年が進むにつれて、この２つの言葉がまったく別物のように扱われてしまうことがあります。たとえば、「1平方メートルで2.2人ずつ」と言われても、子供たちはピンときません。「ずつ」という言葉が、人数や広さと結びつかないのです。

一方で、「速さ」の学習では、「1秒で5mずつ進む」と言われれば、２年生のかけ算の感覚がよみがえります。「○○ずつ × いくつ分」で考えられるからです。つまり、「速さ」は、かけ算の構造と親和性が高いのです。

このように、言葉の使い方ひとつで、子供たちの理解は大きく変わります。「単位量あたりの大きさ」という抽象的な言葉を使う前に、２年生で使っていた「○○ずつ」の感覚を思い出させることが、理解への近道になるのです。

次回予告：

次回は、「速さ」はかけ算で考えるべきか？割り算で考えるべきか？その混乱の正体に迫ります。