「生存者バイアス」とは、成功した人の情報だけを見てしまい、失敗した人の情報が見えないことで判断が偏る現象です。第二次世界大戦中、帰還した戦闘機の被弾箇所を補強しようとしたとき、撃墜された機体のデータが抜けていたため、誤った判断をしそうになった――この有名な話が示すように、「見えている情報」だけで判断するのは危険です。
「受験」の世界でも、このバイアスは強く働きます。合格者の体験談やSNSの投稿は目に入りやすい一方、失敗談はほとんど表に出ません。学校側からの情報は限られ、保護者は塾や口コミに頼りがち。その結果、「合格した家庭がやっていたこと」を真似すればうまくいくと思い込みやすいのです。
たとえば、「受験時の服装は…でなくてはならない」「受験勉強は最低でも○○から」――こうした噂は、実際に合格した家庭の事例から広まります。しかし、その方法が成功したのは、その子の性格や家庭環境に合っていたからかもしれません。万人に当てはまる“正解”ではないのです。
情報が偏ると、保護者は「もっとやらなきゃ」と焦り、子どもに過剰な負担をかけてしまうことがあります。でも、本当に大切なのは、情報をうのみにせず、子どもの成長を喜ぶ姿勢を忘れないこと。そして、サポートは「その子に合った方法」であるべきです。小学校受験はゴールではなく、学びのスタートライン。偏った情報に振り回されず、子どもの個性を見つめることが、何よりの準備になります。
✅ 次回予告:第2回では「噂に振り回される危うさ」をテーマに、なぜこうした情報が広まりやすいのかを掘り下げます。

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