「4年生になると急に算数が難しくなる」とよく言われます。実際、塾に通いだすのも「4年生から」というのも一つの区切りとしてあります。具体的に、4年生の「どの内容」が「どうして」難しい(点が取れない)のでしょうか。その部分を詳しく説明してまいります。

各学年で学習する内容は全国で変わらない

日本で使われている小学校の算数の教科書は、全部で6種類あります。これは各都道府県教育委員会(または市町村教委)が定めています。教科書は「主たる教材」として使用が義務付けられていますので、本来的には公立・私立問わず使われます。小学校においては、教科書ごとに単元の名前や進み方が違います(中学校は基本同一)が、学年トータルで学ぶ内容は、学習指導要領で示されている内容なので、同じになっています。

というより、学習指導要領を網羅的に学べるようにしたものが「教科書」なので、どの教科書を使っていても同一学年ならば(順番は違っても)、同じ内容を学んでいることになります。これにより、年度末に引っ越しして教科書が変わっても、比較的スムーズに学びを続けることができます。検定「教科書」のメリットの一つですね。

具体的にどの単元が難しいのか

北海道でシェアの多い「東京書籍」の単元名で、年度初めから順に、よく難しいと言われる単元を表すと、「大きい数の仕組み」「わり算の筆算」「がい数の表し方と使い方」がこれにあたります。これは全て前期の内容です。つまり、「4年生(の前半)になったら、急に難しくなった」というのがより正確な表し方かもしれません。

ちなみに後半は、「計算のきまり」「垂直、平行と四角形」「面積のくらべ方と表し方」「立方体と直方体」などです。これらは前半の内容と比べると、それほど難しく感じないことが多いようです。

「難しくなる」の正体

では、「難しくなる」とは何をもってそう感じるのでしょうか。実はこの「4年生になると急に算数が難しくなる」は、誰が言っているかがポイントになります。多くの場合このことを言っているのは「保護者」です。そしてその判断材料となるのが、いわゆる「業者テスト」です。テストの点数が急に悪くなったので、4年生の内容が難しいと判断していると考えられます。

なぜ「点数が悪くなる」のか

先ほど挙げた3つの単元は、それぞれ理由があって点数が悪化しやすいのです。

(1) 「大きい数の仕組み」
今までもだんだん大きな数を扱う学習をしてきて、この単元では「億・兆」について学習します。単位自体をおぼえることは難しくないのですが、大きな数を処理できるようになることで、10倍、1/10の概念を3年時に引き続いて学びます。これを理解するためには、これまでに「10が10こ集まると100になる(十進位取り記数法)」などの感覚をしっかりと身に付けている必要があります。

ここを苦手とする子供の多くは、数を(概念化することなく)処理のみで答えを出してきており、ここでも「0をつける」「0をとる」という処理のみで答えを求めようとします。位取りの意味を、具体物を使って考えたり、言葉で説明する経験が不足していると、この後の100倍・1/100や、小数の10倍・1/10などでも同様に処理のみで何とかしようとしてしまいます。

つまり、概念化ではなく処理のみで答えを求めてきたツケが、ここで限界を迎える子供が多いということです。多くの子供にとって、「知識の丸のみ」の限界点と言えるでしょう。(「知識の丸のみ」の例:「あわせて」はたし算、「ちがいは」はひき算など)

(2) 「わり算の筆算」

わり算の筆算は、かけ算・ひき算の両方を「高いレベル」で求められます。九九も、「う~ん」と考えているようでは筆算では上手く使えません。また、繰り返しかけ算・ひき算をするので、今まで求められる正解率80%程度の計算力だと、びっくりするほど○が付きません。

例えば、あまりのある2桁÷1桁(例78÷5)の計算では、かけ算を2回、ひき算を2回しますね。これがもし、1回の計算の正答率80%でこの計算をすると、正答率は(0.8×0.8×0.8×0.8=)約41%まで下がります。これは今まで80点程度の計算力であれば、この単元では40点ぐらいまで下がるということです。

よくあるケースは、今までは「6×7」「4×7」「7×8」など苦手な九九があってテストで間違えても、「しっかり覚えられなかった」「ケアレスミスだった」などと見逃されたものが、この単元では筆算の「途中で」間違ってしまい、正しい答えにたどり着けないというものです。

(3) 「がい数の表し方と使い方」

この単元は「問題文の指示により答えが変わることがある」という点で、今までとはっきりとした違いがあります。例えば、「上から2桁のがい数で」「千の位までのがい数で」、「百の位を四捨五入して」など、同じ数の四捨五入でも、どこまでで表すのかにより、処理の仕方が変わります。

今までは、問題文をしっかり読まなくても、答えが求められることが多かったものが、問題文の指示をしっかり聞く必要があって、さらに自分で判断する必要もあります。

これも「大きい数の仕組み」同様、算数を「数の処理」に特化した学び方で答えを出してきた子供にとって、違和感の大きいところです。「四捨五入」の処理は理解できても、「どうやって使うのか」「どういう時に使うのか」、もっと言えば「なぜ使うのか」を考えないで、算数を「覚えて処理」してきた子供にとっては、どうしていいかわからなくなってしまうのです。

それでは、次の記事で「これらの対策としてどんなことができるのか」について具体的に解説していきます。ついでに、うちの塾での取組も紹介しますね。


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