🟦「コンパスって『円をかく道具』じゃないの？」全３回

「コンパスは円をかく道具」。そう教わってきた方は多いと思います。もちろん、間違いではありません。でも、算数・数学教育の世界では、それだけでは足りないと考えられています。

算数は「答えを出す教科」ではなく、「考え方を育てる教科」。その視点で見ると、コンパスは単なる道具ではなく、子供の思考力を育てる“きっかけ”になります。

たとえば、円をかくとき。「なぜこの道具で円がかけるのか？」と聞かれて、答えられるでしょうか。中心から一定の距離にある点の集まりが円。その定義を、コンパスは目に見える形で示してくれるのです。

でも、作図が苦手な子供は、この「円の意味」がわかっていないことが多い。手順だけ覚えて、なぜそうするのかを考えない。これは文章題が苦手な子供にもよく見られる傾向です。「どうやって解くか」ばかりを気にして、「なぜそうなるか」を考えない。

つまり、コンパスをどう使うかよりも、「なぜ使うのか」「何を表しているのか」を理解することが、算数の本質に近づく第一歩なのです。

このシリーズでは、コンパスを通して見えてくる算数・数学教育の本質を、3回にわたって掘り下げていきます。結果や手順ではなく、「考え方」に注目してみましょう。

🔜次回予告：

次回は「円とは何か？」をテーマに、コンパスが示す数学的な意味について考えます。