🟦第2回　作図が苦手な子は、円の「意味」がわかっていない？

「うちの子、作図が苦手で…」という声をよく聞きます。でも、その“苦手”の正体は、単に手先の器用さではないことが多いのです。

作図がうまくできない子供の多くは、「円の意味」がわかっていません。コンパスの使い方は知っていても、「なぜその形になるのか」「何を表しているのか」が理解できていない。つまり、手順だけを覚えていて、考え方が抜けているのです。

これは、文章題が苦手な子供にもよく見られる傾向です。「どうやって解くか」ばかりを気にして、「なぜそうなるか」を考えない。算数の本質である“論理的思考”が育っていない状態です。

この「円の意味を理解する力」は、実は中学以降の学習にもつながっていきます。たとえば、中学1年で習う「直線上の点から垂線を引く作図」。これは、コンパスで円（の一部）をかくことで、三角形の三辺が等しいゆえに合同であることを利用して、垂直な線を導き出す作業です。

つまり、円の定義を理解していれば、作図は「意味のある操作」になります。ただの手順ではなく、「なぜこの方法で垂線が引けるのか」を論理的に説明できるようになるのです。

作図が苦手な子供は、円の意味を理解していないことが原因である場合が多い。これは、算数が「考える教科」であることの証拠でもあります。

🔜次回予告：

最終回では、算数・数学教育が「考える力」を育てる教科であることを再確認し、教える側が意識すべき視点の転換について考えます。