🟦第3回　コンパスが教えてくれること

「算数は答えを出す教科」と思われがちですが、実はそうではありません。算数は「考える力」を育てる教科です。コンパスは、そのことを教えてくれる象徴的な道具です。

円の意味を理解していないまま作図をしていると、手順だけを覚えて終わってしまいます。でも、円の定義を知り、「なぜこの道具で円がかけるのか」を考えることで、子供の思考は深まります。

これは、文章題にも通じる話です。「どうやって解くか」ばかりを気にする子供は、「なぜそうなるか」を考えようとしません。その結果、応用がきかず、少しひねった問題になると手が止まってしまう。

中学に入ると、コンパスを使った作図はさらに意味を持ち始めます。たとえば、直線上の点から垂線を引く作図では、円を使って三角形の三辺が等しいことを示し、合同条件から垂直を導きます。ここでは、円の性質と論理的な根拠が結びついているのです。

このように、算数・数学は「考える力」を育てる教科。コンパスはその入り口であり、ただの道具ではありません。「なぜこの形になるのか」「なぜこの方法で解けるのか」を考えることが、学びの深さにつながります。

教える側も、結果や手順だけでなく、「意味」や「理由」に目を向けることが大切です。コンパスを使う場面こそ、子供の思考を育てるチャンスなのです。