🟡第1回：子どもの言葉に“演出”が含まれることもある

子どもが「学校に行きたくない」と言うとき、その理由として「先生が怖い」「友達に嫌なことを言われた」といった話が出てくることがあります。親としては、すぐにでも助けてあげたい気持ちになりますし、何か大きな問題があるのではと不安になるのも当然です。

けれども、子どもの言葉には、時に“演出”が含まれていることもあります。これは、嘘をついているというよりも、「自分の気持ちをわかってほしい」「納得してもらいたい」という思いから、話を少し強調してしまうことがあるということです。

学校現場でも、こうした場面はよくあります。たとえば、Aさんが「Bさんに悪口を言われた」と泣いて訴えてきたとき、先生はまずAさんの気持ちを受け止めながら、Bさんにも丁寧に話を聞きます。なぜなら、Bさんも同じように大切なクラスの一員だからです。

Aさんの話を聞いた後、「それじゃあ、次はBさんにもどうだったか聞いてみるね」と声をかけると、Aさんの表情が曇ったり、反応が鈍くなることがあります。この「相手にもすぐ聞いてみる」やりとりは、時間がかかるため、日常的にはあまり行われないことです。もし本当に辛い経験であれば、この声がけにたいして、ホッとした表情が見られるはずです。そうならない場合は、自分（Aさん）自身が“自分に有利な形”での表現が含まれていたことに気付いて、「マズい…」となっている可能性もあるのです。

これは、子どもが悪いという話ではありません。むしろ、子どもなりに自分の気持ちを整理し、伝えようとしている証です。だからこそ、親は「本当に困っているのか」「少し誇張しているのか」を見極める視点を持つことが大切です。

子どもの言葉をそのまま信じることも大切ですが、同時に、親として冷静に受け止める力も必要です。そのバランスが、子どもとの信頼関係を育てる土台になります。

次回予告

第2回では、親が子どもの話を聞いたあと、どう伝えるか、どう動くかの工夫について考えます。