「習っていないことを書いたらバツ」というルールには、教育の本質的な理由があります。それは、学習指導要領で重視されている「学びに向かう姿勢」と深く関係しています。
学校教育では、子どもが「何が分かっていて、何が分かっていないか」を自分で把握する力を育てることが大切です。この力は、専門的には“メタ認知”と呼ばれます。メタ認知とは、自分の学びを客観的に見て、次にどうすればよいかを考える力のこと。これが育つと、子どもは「できないことをできるようにする」ための行動を自分で選べるようになります。
ところが、習っていないことを使って正解してしまうと、この力が育ちません。なぜなら、子どもが「分からない」という事実に気付けなくなるからです。安易に丸がつくと、「理解していないのにできた」という誤った自己評価が積み重なり、学びの質が崩れてしまいます。
学校がバツをつけるのは、意地悪でも形式的なルールでもありません。むしろ、子どもが自分の学びを正しく見つめるための大切な仕組みなのです。習っていないことを使わないというルールは、論理的思考とメタ認知を守るための教育的必然なのです。
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