中学入試の過去問というと、「六年生が解くもの」というイメージが強いかもしれません。では、四年生や五年生がチャレンジするとどうなるかというと、ほとんどの場合、最初の一問目から手が止まってしまいます。これは決して珍しいことではなく、むしろ“ふつうの姿”です。
保護者の方からは、「まだ習っていない内容だから難しいのでは?」と言われることがあります。しかし実際には、知識が足りないから解けない、というよりも“どう取り組めばいいのかの経験が足りない”ことが最大の理由です。入試問題は、問題文の長さや条件の複雑さなど、「学んだ力をどう組み合わせるか」を問う設計になっています。四・五年生の段階では、まさにその“組み合わせ方”の経験がまだ十分ではありません。
たとえば、普段の教科書レベルの問題は、文章と式のつながりが比較的ストレートです。しかし入試問題では、情報が複数行に分かれ、条件が前後していたり、最後に求めるものが遠い位置にあったりします。そのため、“どこから手をつけたらいいのか分からない”という状態になりやすいのです。
これは、子どもが理解できていないからではありません。
むしろ、今までの学びが「単線」で積み上がってきたのに対し、入試問題は「複線」の構造をしている。そのギャップに戸惑っているだけなのです。
では、四・五年生に過去問を触れさせることは良くないのかというと、そんなことはありません。適切な扱い方をすれば、入試問題は強い学びの刺激になり、自信にもつながります。
大切なのは、「いきなり入試問題の形で出すのではなく、子どもが理解しやすい形にかみ砕いてあげる工夫」です。この“導入の階段”があるかどうかで、過去問の価値はまったく変わります。
次回は、実際にどのような工夫をすることで、四・五年生でも入試問題を学びの機会に変えられるのか――具体例をまじえながらお伝えします。

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